R18文学賞受賞作「ふがいない僕は空を見た」

  

ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

 

 

 R18文学賞大賞受賞作です。

R18文学賞大賞受賞作です。

 

大切なことは2回言うルールにのっとってみました。

 

正確に言うと R18文学賞大賞受賞作である短編「ミクマリ」を収録した

連作短編集がこの「ふがいない僕は空を見た」です。

 

読みながらに今私は凄い傑作を手にしているのではないかとちょっと震えた。

多いときには年間365冊以上本を読んできた私ですが

震える割合は50冊に1冊あれば多い方だと思う。

 

Rとついているからには性愛的な描写もあるのだけれど

描写から感じるのはいやらしさよりも、痛ましさ。

Rという表示がこんなに痛ましいものだとは。

 

主婦と体の関係を持つ高校生男子。

 

高校生男子と体の関係を持つに至った主婦の日常。

 

彼氏が主婦と関係を持っている彼女の兄は引きこもり。

 

彼の友人は貧困家庭。バイト先の先輩に勉強を教わりながら

貧困からくる閉塞感から抜け出ようとしている。

 

バイト先の先輩は特殊性癖の持ち主。

 

高校の先生は結婚を決めてくれない恋人との間に子供ができて

駆け込んだ先は主婦と不倫をしていた教え子の自宅の助産所

 

彼らの日常が少しずつ非日常へとずれていく。

それでも自分たちの日常を生きていくしかない彼ら。

 

助産師の母が命と向き合ってきた日々の闇と輝きが最後に

綴られつつも物語は巡ってきた春にて終わる。

 

一人一人の日常がリンクし合って響きあう。

痛ましく人間の影の部分が語られていても幽かな光を感じる

 

これからも作品を追っていこうと決めた作者さんでした。

素晴らしかったです。

 

追記:「ふがいない僕は空を見た」は第24回山本周五郎賞受賞、第8回本屋大賞第2位も受賞しております。